結局腹が減りすぎてひとつも眠れなかった。
気づけば、少し開けてあるカーテンの隙間から知らん顔で朝の光が差してくる。
遠くで始発列車が鉄橋を渡る音がする。
そこかしこの木にとまった鳥たちの鳴く声が聞こえる。
微かに、ゴーッという音が通奏低音のように鳴り続けている。何の音かは分からない。車やらビルの空調設備やらが発する音が混ざり合って常にそのような音に聞こえているのかもしれない。大気が鳴っているようだ。
それらは、「環境音(都会の朝)」と検索すればフリー素材で出てきそうなほどテンプレート的な都会の朝の音だ。というのも、俺はかつてその音を調べたことがある。だから本当に出てくることを知っている。それも、もう一年も前になる昔の話だ。
ベランダにコンデンサ・マイクを立てて録音すれば同じような音がサンプリングできそうだな、今度やってみようかしら、などと考えながら諦めて腹を満たすことにする。
腹が満たされた後の睡魔に恐怖を感じている。