天と地とテノチティトラン2

私はロボットではありません

少年ロック

「ロック少年の心は何処へ消えたのだ?」

 

ここしばらくそのような疑問がぼんやりと脳裏に漂っていたのは事実だった。

 

論理的思考。自分が最も不得意としていたはずのスキルで飯を食っている。それはそれで良くやっていると自分を褒めたいのだが、本懐である面白き生活にまでその思考は浸透してしまっている気がする。

 

そして、

 

「最近、元気ですか?」

 

今日、そう問いかけられたとき、自分でもはっとしていた。身体は充分すぎるほどに元気だったが、彼はその奥にある魂に問いかけていた。お腹が空いているからかもしれない、という自分への間の抜けた言い訳も、おそらく図星を突かれた思いの為だったのだろう。我ながら他人事のようだが。

 

一体何だって言うんだ?これは俺の人生だぞ。

俺らしさ?それって何だったっけ。

今の俺は明らかに俺か?

自信がない。あまりに上手く行き過ぎている気もする。

 

まあ、こんなことよくある。というか、よくあった。自分が自分でない感じのまま人生が進む感覚。RPGのムービーパート。操作不能。しかし怖くはない。レールに乗るのは安心だ。路線を乗り継ぐ電車の旅。突飛な場所に送られることもない。最果ての駅にも何かしらの造られた理由がある。たぶん。

 

だめだ。脈絡のない、抽象的なことしか考えられなくなってきている。俺は楽しい人間で、間抜けで、愉快で、意外性があった。過去形だ。

過去形なのか?

最近忙しいんだ。

忙しいのか?

落ち着きたい。

そんなこと言って、なんだかけっこう落ち着いているじゃないか。面白き生活は?

これでも充分面白いよ。まだ曲も作ってる。音楽を聴いて感動したりもする。愛すべき人がいる。愛すべき人々がいる。最近はまた詞も書いているんだ。弁当だって毎日作ってる。きっと驚くぜ、君が見たら。ちゃんとやってる。癪かもしれないけど、ちゃんと大人になってる。しかもほとんど君のまま。大丈夫だよ。安心して眠りなさい。君が上手くやったから、俺も元気だよ。君がまた目を覚ます時に、がっかりしないようにするよ。

いい子だから、おやすみ。

 

とかまあ、そんな感じで、確かに少年ロックは眠ってしまったのかもしれない。

 

昔よりもあの悪ガキが顔を見せることも少なくなった。

 

でも、彼は絶対にいなくなったりしない。

 

ロックがこの時代でもまだ死んでいないように。

 

春のからっ風

春のからっ風